金曜の夜、夫と罵りあった。
(ただの喧嘩、ともいう……)
互いの発言を否定し、
互いの価値観を嘲笑い、
互いの主張を拒絶した。
自分が発端ではじまった
大人たちの壮絶な罵倒の浴びせ合いに、
娘はたちまちいい子に変身し、
すみっこによけていた野菜をきれいに食べほし、
はきはきと明るく大きな声で「ごちそうさま」と、
からっぽになった皿をはこんできた。
「ごちそうさま。
きなこ牛乳とくるみとレーズンください」
媚びるように、うかがうように、
なだめるように、なぐさめるように、
ニカッと笑って私を見あげる。
たぶんこういうのを虐待というのだ、
と思う。
親同士の罵り合いは、
子どもの心の奥をじわりと深く傷つける。
一緒にきなこ牛乳とくるみとレーズンを
次から次へと口に入れる。
娘が食べ終わったあとも、
まだまだ口に入れる。
いくつもいくつも。
翌朝、ホームベーカリーをあけると、
ちゃんとした食パンがたたずんでいた。
娘のつくったクリスマスツリーを横におくと、
我が家にも
クリスマスっぽい空気がまいこんできた。