asaの足あと

何気ない暮らしと、その中で、日々こぼれ落ちるささやかな幸せと小さな痛みをそっと静かに残すように、このブログをしたためています。

年末に義母とキッチンに立つ

「田作り、レンジでやるといいってきいたのよー」

と、大晦日のキッチンで義母。

「いつもなんかべちゃっとなるのよ。

 レンジではどうするのかしらね?」

と言われたので、

「あっ、ちょっと調べてみますね」

と、ググる

『田作り 作り方』とだけ入れて、

あえて『レンジ』とは入れずに。

「レンジじゃなくて、

 普通にフライパンでやっていいですか?」

ときくと、

「はい、あなたの好きなようにして下さい」

と、ごちゃごちゃしたコンロを

ひとつ譲ってくれる。

とはいえ、お煮しめやらお蕎麦のだしで、

2つのコンロは忙しそう。

少しせかせかしながら、

弱火で煎って早めに切り上げる。

「はい、みりんこれ、お酒これ。

 その上に入れちゃえばいいから」

と、ごまめの入ったままのフライパンをみて

義母が渡してきたので、

「あっ、いったんお皿にあげてみていいですか」

と、軽く遮ってお皿にひろげてから、

空になったフライパンに

渡されたみりんと酒と砂糖と醤油を適当に入れ、

煮詰める。

ググッたくせにやっぱりレシピ通りに作れず、

レシピ通りに作れないくせに義母の指示も遮る。

私は義実家でも、どうにもねじくれている。

 

煮詰めてとろんとしたタレを

少々煎り具合が足りない気がしているごまめにかけると

タレの量が明らかにたりず、

あわてて作り足す。

またかける。からめる。口に放り込む。

うん、美味しい。

 

夕方、お節を何品かお皿に入れて

ご近所に届けに行った義母が

帰ってくるなり、

「あなたの田作り褒めてたわよ〜」

と嬉しそうに教えてくれる。

うちのお嫁さんはよく働くのよ〜

と、義母はご近所さんに言ってくれる。

「わぁ、嬉しい。

 火にかけてぶっかけただけですけどね」

と返す。

 

義実家では、大晦日の夜に、

お蕎麦とあわせて、準備したばかりのお節も食べる。

いちばん地味な田作りを、

闘病中で食の細くなった義父がぱくぱく食べ、

私が作るのをみてた娘が

気を使ってるのかぱくぱく食べる。

「これは買ったのかね。いい味だ」

と義父の母であるおばあちゃんが言い、

「あら、それasaちゃんが作ったんですよ」

と義母は言い、私に向かって、

「みんな美味しいって。

 来年からはasaちゃんに作ってもらおうかしらね」

と笑顔を向けてくれる。

「はい、喜んで」

と答えると、

「田作りは簡単だからね」

と義母。

「はい、とっても」

と私。

お蕎麦をすすったおばあちゃんが

「お出汁が美味しいね。これは誰がつくったんかね」

ときいてきたので、

「お義母さんです。

 お義母さんのお出汁は本当に美味しい」

とすかさず言う。

「こりゃ美味しいなぁ。なにで出汁をとってるの?」

とおばあちゃんがきき、

「イリコや鶏や昆布などです。

 そうですか、美味しいですか。

 あなたは?食べてる?どう?」

と義母は嬉しそうにみんなのお椀をのぞきこむ。

みんなが美味しい、美味しいと頷き、

夫が「汁足して」とお椀を差し出す。

嬉しそうに手をのばす義母を

「あっ、私ももう一杯いただきます。

 一緒にいれちゃいます」

と制し、立ち上がる。

「どんどん食べてね。

 明日のお雑煮もこのお汁だけど、

 いっぱい作ったからね」

と義母。

気前のいい義母は、大きな大きなお鍋に

大量の美味しい汁をつくってくれる。

たっぷりの骨付きの鶏肉に、

干し椎茸の戻し汁、牛蒡、金時人参

それに、昨年くらいから、茅乃舎のだしパックも。

茅乃舎のだしはやっぱり美味しくて、

義母はこっそり愛用している。

「本当にいい味だ。お蕎麦もこれも」

と、おばあちゃんがまた田作りを口に入れる。

「お義母さんのお出汁は、

 お蕎麦にもお雑煮にも最高ですよね」

とまた私がこたえ、

「また来年もasaちゃんに田作りお願いしようね。

 田作りは簡単だからね」

とまた義母がこたえる。

「田作りはさっとフライパンでできるからね」と。

・・・

可愛いなぁ。

嫌味でもなんでもなく、

おまけのようについてくる

最後のひと言を愛おしいなぁ、と思う。

 

ちょっとした嫉妬のような、おまけ。

いちいち言わなくても、

私が料理上手じゃないことも

お義母さんにかなわないことも

みんな分かっていることなのに。

口にしない方がスマートなのに

スマートになりきれない可愛い大人。

人はいくつになっても

誰かに小さな嫉妬をおぼえる。

その大半が意味のない、不要な感情なのに。

そう思うと、なんとなく安心する。

愛おしい可愛い嫉妬。

 

嫉妬は子どもじみた感情だと思っていたけど、

大人の世界にも

うじょうじょと渦巻いている。

捨て去ったはずの自分の中の嫉妬にもがき苦しんだり、

誰かの醜い嫉妬に疲弊したり、

ときに、可愛い嫉妬に笑みをこぼす。

 

姪っ子ちゃんのことを褒めると、

娘は、自分は?と必ず抱きつきにくる。

 

「でも、本当に美味しいわね、この田作り」

クックパッドだったかにお世話になった超簡単な田作りを

義母が、ちょんとつまんで口に入れる。

横顔を見ながら、美人だなぁと思う。

夫もお母さん似ならよかったのに……。

 

ひねくれた、ねじくれた私を

優しく受け入れてくれた義母たちを

義実家のみんなを、

私は実はとても愛おしく思っている。